生産者インタビュー

( INTERVIEW 02 )

2026.03.26

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本当にやりたいことを考えたら”ここじゃない”と思った、だから農業という道を選んだ

富岡農園 富岡丈明さん

PROFILE

1982年山梨県甲府市生まれ。山梨大学卒業後、東京の電子部品のメーカーに就職し、海外営業を担当。2009年に脱サラして山梨県北杜市に移住。北杜市明野町の有機農家の元で2年半の研修を経て、2011年に北杜市小淵沢町にて夫婦で就農。趣味はギターと釣り。

● 独立就農 : 2011年
● 現在の農地面積 : 6.5ha
● 現在の栽培品目数 : 30品目
● 従事者 : ご夫婦2人とパートアルバイト12名(草刈りバイト含)

海外営業として働いた、過酷な会社員時代

大学卒業後は東京の電機メーカーに就職しました。本当はその頃から農業をやりたかったんですけど、研究室の先生に勧められるまま就職したので、強い動機はなかったんです。学生時代はバンド活動をしていて、外国人ともバンドを組んでいたので、履歴書にもそのことを書いたら、海外営業に配属されてしまって(笑)。英語なんて全然喋れないのに。長時間の残業続きで、本当に過酷でした。ずっと心臓がぐっと握られているように痛いのに、検査を受けても異常なし。精神的にも追い詰められて、心身ともにボロボロでした。

そんな中で受けたコーチングで、人生設計や未来のビジョンを改めて整理して考えたときに、「やっぱりここじゃない、農業をやりたい」と思ったんです。実家が兼業農家で、祖父が食卓に並ぶ野菜を育ててくれていた、というのが原体験としてあるからかもしれません。周りにも背中を押されて、3年続けた会社員を辞める決心がつきました。

赤峰さんの「自分でやりなさい」という言葉で、北杜で就農

大分の臼杵市に赤峰勝人さんという農家さんがいて、その方の話を聞くために車で何時間もかけて10回以上通いました。循環農法で有名な方で、本当は弟子入りしたかったのですが、「君はできそうだから自分でやりなさい」と言われて。大分に通いつつも、その頃から就農するなら北杜で、と決めていました。幼い頃から何度も渓流釣りで来ていて、この地が好きだったので。2009年に移住してきて、タテノファームという有機農業を長くやられているところでの研修を経て、独立就農したのが2011年でした。

地域の人からの“もらいもの”で始めた農業

就農した頃の資金は10万円以下(※)。育苗のためのハウスも買えず、地域の人からタダでもらった資材と、祖父の形見の小さなトラクター、3万円で買ったマルチャーでスタートしました。夏に開催されるマルシェに毎日出店して、お客さんとお話しして、そこで宅配を取ってくださる方が増えていきました。北杜の道の駅は首都圏の方がよく来るので、単価も高く評価してくれる。やはり東京が近いという、北杜の土地の有利性は大きいですね。今は売り先に困ることはなくて、作った分は売れるという状態です。ただ、スタッフのことを考えると、量産して薄利多売にはしたくないと思っているので、そこのバランスや調整が難しいところです。

※現在は認定新規就農者向けに「就農準備資金」や「経営開始資金」という制度があり、49歳以下、前年の年収600万円未満などの条件はありますが、行政の補助も受けられます

仲間が増え、研修生を受け入れる立場へ

農業をはじめた頃は、ギターや好きなことをして暮らせたら、と思っていましたが、有機JAS認証を取ったり、トラクターを買ったり、子どもが生まれたりした2014年頃から、「本気でやらなきゃ」と思うようになりました。がむしゃらに作って、できたものを売って、をしていたら、図らずも規模が拡大していき、2020年頃からは研修生を受け入れる立場になりました。
農業大学校から来た研修生が、翌年そのままパートになることも多く、今までに独立就農した仲間も6人ほどいます。北杜市の農業大学校の職業訓練には、失業保険を受け取りながら農業を学べる仕組みがあって、座学も受けながら、実際に農家のもとで研修ができるんです。それが新規就農者を増やすひとつの要因になっていると思います。農業大学校の卒業生には、元エンジニアの人、金融系に勤めていた人……さまざまな経歴の人がいますが、ちゃんと職業として農業を見据えて、“第二の人生は農業で生きていくんだ”という心意気を持つ方が入ってくるのが、この地域の特徴だと思います。

研修先のミスマッチを減らすために、必要なのはデータベース

日本の就農の現状で言うと、研修生が“やりがい搾取”されてしまう例もあって、草刈りばかりやらされたり、一日中重労働だったり……それに耐えられなくて辞めてしまう、そんな話も聞きます。だからこそ、もっと研修生側が研修先を選べるような仕組みがあったら良いと思っています。どういう考え方で、どういう人が、どういう所で農業をやっているか。ビジョンや農法も含めて、プロ野球で言う“選手名鑑”のようなデータベースを作って公開できたら良いな、と。 研修生が自分とマッチする農家を選べるようにしたい。ミスマッチが減れば、辞める人も減り、地域の就農者も増えるはずです。

北杜の有機農業はどんどん自由になっている

今の北杜はどんどん自由になっていると思います。僕は有機農業の第三世代くらいで、さらに今、第四世代、第五世代が活躍しつつある。仲間が多いし、みんなアンテナを高く張って情報収集するし、共有もします。僕の入っている農事組合法人グットファームでも、定期的に勉強会を開いてみんなで集まって、資材や栽培方法などについて話す会があります。先輩たちを見ていると自分も奮い立たされるし、インスパイアされる。そういう環境はやっぱり良いですよね。でも組合や団体に縛られることなく、垣根を超えていけるのも北杜の特徴なので、次の世代にはそういう自由な関わり方をどんどんしてほしいなと思います。

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